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○○ママの好きなこと・大切なこと 三児を子育て中の経営者が挑む、インクルーシブな社会づくり | 小松麻衣さん

2025年5月2日 公開

プロテック株式会社 代表取締役
小松麻衣さん

札幌のIT企業、プロテック株式会社の代表取締役を務める小松麻衣さんは、私生活では三人の子育てに励むママ。何事も「なんとかなる」という前向きな姿勢と「目の前のことを一生懸命やる」というポリシーで、新たな事業にも果敢に挑戦する小松さんに、これまでの経緯や子育てについて伺いました。

Contents

1.事業承継のきっかけは「成り行き」から?
2.ご主人を置いて北海道へUターン!?
3.多様な価値観を育んでくれた、母になってからの視点
4.「仕事も世の中も、得意なことを得意な人が担えばいい」

事業承継のきっかけは「成り行き」から?

ーまずは代表を務めるプロテック株式会社について教えてください
父が創業し、社会福祉事業所向けのシステム開発とサポートを約40年ほど提供している会社です。介護・福祉業界特有の「介護報酬」の点数計算や勤怠管理、会計などシステムを開発しています。

ー2023年に事業承継をされたそうですね。もともと継ぐ意志があったのですか?
全くそんなことはなくて、ほぼ成り行きです(笑)。父としても苦労をしていたので、当初は娘に継がせようとは考えていなかったと思います。私は法学部の出身で弁護士を目指していたんですけど、司法試験に落ちた上に氷河期世代だったので就職もなくて、卒業後はフラフラしていました。そんな状況を見かねた両親から「それなら会社を手伝いなさい」と言われたのが始まりです。

ー意外ですね!
ITのことはもちろん介護や福祉業界についても知らない状況で営業にかけ回り、岩手県の小さな町に出向してシステム導入を進めて、実際の介護施設を直接目で見たりと、学びになる機会を数多く経験しました。とにかく目の前に一生懸命…で走り回る日々でしたが、当時の役員とうまくいかなかったり、転勤のある夫との結婚、それから子どもが欲しかったことを理由に一度は退職しました。

ーそうだったんですね。なぜ復帰されたのですか?
大学で働いたり、3人の子どもを出産して静岡に移ったりと色々な経験をしたんですけど、ある時に事業を継ぐはずだった役員から「戻ってこないか」と言われて。聞けば「自分も年を取ったし、次の社長になるような器ではない」と言うんです。会社の監査役でもある母に相談したら…ちなみにウチでは母が一番強くて、母に言われたことは絶対なんですけど、その母が「戻って来なさい!」と。

ご主人を置いて北海道へUターン!?

ーとはいえご主人やお子さんとの生活もありましたよね…?
そこを解決できたのは義母の応援も大きかったです。夫の実家もかつて後継不足で自らが経営する会社を整理した過去がありました。そんな苦労を経験した義母が「あなたが継いであげるのが一番」と応援してくれたんです。そんなこんなで夫に相談するのが一番後回しに…

ー後回し…?
引っ越しの前日に夫に手紙を書いて「明日引っ越します」と伝えました(笑)

ーえええっ!?
別に仲が悪いわけじゃないですよ(笑)。夫は静岡で研究職をしていたので、私が北海道に戻るとなると100%置いていくしかなかったんです。おまけに当時の夫は忙しくて、ほとんど顔を見ない生活だったので、短い時間で説得できる自信がなくて(笑)

ーお子さんたちはどうされたんですか?

当初は私と3人の子どもが札幌で暮らしていました。ですが今は16歳の長男と13歳の次男の2人が東京にいます。長男は小学校の時、親しい友達が東京の私立中学を受験するから一緒に行きたいと言い出して進学。その後、次男も「じゃあ俺も」と別の中学に進学しました。今2人は東京の妹の家で暮らしています。なので今我が家は夫が静岡、長男と次男が東京、私と三男が札幌というバラバラな生活です(笑)

ー聞いたことがない生活です(笑)。お子さんたちと離れることに不安はなかったんですか?
家族も「やっちゃいなよ」という感じでしたし、私自身も小さな頃から父が全国を飛び回っていたので抵抗が無かったのかもしれません。それよりも「子どもの願いを叶えなきゃ」という気持ちしかなかった気がします。寂しさはじわじわと後からきましたけどね(笑)。ちなみに三男は「ママと一緒にいるのがいい」と言ってくれています。ありがたい…(笑)。

ー子育てで苦労されたことは?
静岡に移った時は末っ子が生まれてまだ2ヶ月で、不安もあったんですけど、まあなんとかなったんですよね。それからはあまり悩んだ経験がないんです。ある程度になったら勝手に育ってくれると信じていますから。育児というより放牧という感覚に近いのかもしれません(笑)

ー(笑)
あとは、仕事と同様に「得意なことは得意な人に任せる」という考えが強いので、保育士さんも積極的に頼ってきました。実は私も父もIT企業の経営をしているのに、プログラムの事は全然知らないんです。それはプログラムのことはエンジニアを頼って、私たちは営業や経営に専念をする、という考え方が根づいているからです。

多様な価値観を育んでくれた、母になってからの視点

ー子育ての経験が仕事に生きていると感じることは?
より多様な視点で物事を見られるようになり、社員たちの「弱さ」にも寄り添えるようになったと思います。またお客様に対しても、難しいご依頼を頂いた時に単に「できません」って突っ跳ねるのではなく「できること何か」を考え提案するようになりました。それは母になって制約が増えたからこそ培われた発想に他ならないと思います。

ー会社には女性社員も多いと聞きました
父の時代は女性が3人くらいしかいなかったんですが、今は男女比が逆転して圧倒的に女性の方が多くなりました。4月からも2人、産休から戻ってくる予定です。

ー柔軟な働き方も大事にされているそうですね
職種によっては難しいところもありますが、「ダメでもいいから相談してみて」と言っています。開発なら在宅と併用できたり、フルリモート時短で働く女性もいます。弊社は給料が高くないのでこういう言い方になってしまうのかもしれませんが、一度に大きな収入を得るよりも、ほどほどでも長く働ける環境の方がいいんじゃないかと思うんです。

「仕事も世の中も、得意なことを得意な人が担えばいい」

▲プロテックが2024年9月にオープンしたECサイト「Omusubi」

ー新しい事業も始められたそうですね
障がいのある人たちが働く就労継続支援事業所がつくった商品をリブランディングして販売するECサイト「Omusubi」を立ち上げました。

ー何かきっかけがあったんですか?
調べた当時の北海道の就労継続支援B型事業所の平均工賃が時給換算で275円と、就労内容に合っていないことを知ったからです。とはいえ、就労支援事業所は支援をするプロではありますが、マーケットのプロではないので、工賃を上げたくてもあげられない所も多いと聞きます。私たちがマーケティング部分を担うことで、少しでも改善につながればと考えたんです。

▲就労支援事業所で訓練の一環として作られる商品は、丁寧に作られているにもかかわらず、行き場がない商品が多いそうです。

ーなるほど
先ほどの話とも重なりますが「得意なことをやってもらえばいい」と考えています。障がいのある方を「ちょっと苦手なことがある人」ととらえ、それぞれの「得意」が協業し合うことで、インクルーシブな社会ができると思うんです。

ー今後の展望は?
「Omusubi」はまだまだ試運転段階なので、エシカル消費を意識してくださる方や、社会が目を向けてくれるようなハブとしての機能を持たせられたらなと思います。また最近、後継不足に悩んでいるある社会福祉法人の経営を引き継ぎました。現場目線を知ることでより良いシステムや発想が生まれるのではと期待しています。

ープライベートではいかがですか
楽しく毎日を過ごし、お酒が美味しければいい(笑)。これからもなるべく悩まない人生を送りたいですね!

ー何だか元気を貰えるお話でした。ありがとうございました!

プロテック株式会社 代表取締役
小松麻衣さん

プロテック株式会社:https://www.protech-web.co.jp/index.html
ECサイト「Omusubi」:https://omusubi.netshop.jp/