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知って安心!パート・仕事にまつわる豆知識 2022年10月「社会保険の適用拡大」で主婦パートの働き方が変わる?手取りのお給料が減るってホント?(事例あり)

2022年3月21日 公開 / 2024年10月3日 更新

2022年10月から始まる社会保険制度の改正では社会保険の適用範囲が大きく拡大し、多くの人が新たに加入対象になります。簡単に言えば、それまで保険料を支払っていなかった人も、お給料から「天引き」されるということ。一方で万が一の時の保障や、老後の支えとなる年金は増える見込みです。「私は対象になる?」「どのぐらい働くと損する?」そんな疑問に、社会保険労務士の遠藤起予子先生が答えます。

新たに社会保険の加入対象となる人の条件。

これまでの社会保険の適用範囲は、従業員数501人以上(※)の企業において、就労時間や月額賃金が一定の基準を超えた人が対象でした。今回の変更ではその範囲が「101人以上」へと引き下げとなることで、およそ45万人もの国民が新しく社会保険の加入対象となると言われています。具体的には、次の①から⑤の条件を満たした人が適用範囲です。

(1)従業員数が101人以上(※)の企業に勤めている
(2)1週間の労働時間が20時間以上
(3)月額賃金が88,000円(年収106万円)以上である
(4)2カ月を超える雇用の見込みがある
(5)学生ではない(休学中・夜間学生は加入対象)
※パート・アルバイトを含む社会保険被保険者に該当する従業員数

(1)〜(3)については計算してみなければ分からないという方も多いのではないでしょうか。以下、主婦のAさんを例に見ていきましょう。

▼扶養内で働いていた方は、収入は減り年金は増える▼

Aさん(36歳主婦、長女小学5年生、夫の扶養)
◎札幌に10店舗ある弁当屋さんでパート勤務(1店舗につき11人が勤務)
◎勤務時間は月曜から金曜までの5日間、10時から16時の5時間
◎時給は1,000円で、月の給料は平均100,000円(年収120万円)
まず従業員数ですが、Aさんが働くお店の場合、1店舗あたりの従業員が11人でも、10店舗となると110人のため、(1)の条件である101人を超えてしまいます。次に(2)の労働時間は週25時間、お給料も(3)の月額88,000円以上と、全ての条件を満たしています。
北海道の最低時給は889円(2022年4月現在)ですから、時給1,000円は決して高額ではありません。Aさんと似たような働き方をしている人は、対象となる可能性が高いと言えます。

配偶者の給与明細に注意を

これまで扶養で働いてきた人の中には、Aさん同様に年収が扶養基準(130万円)以上とならないように調整してきたという方も多いのではないでしょうか。以前であれば、年収130万円以上となった場合、保険料の支払い義務が発生してしまうからです。
今回の改正では前述の(1)〜(5)の要件を満たす場合は保険料負担が発生します。Aさんの例だと、毎月約14,000円の保険料支払いが新たに発生することとなります。
一方で改正前と異なり、国民年金・国民健康保険よりも保障の手厚い厚生年金と健康保険への加入となります。Aさんの場合、将来もらえる年金は1カ月あたり5,000円増額(※)となり、ケガや病気の際に傷病手当金などの保障を受け取ることが可能となります。
※今後10年加入する場合。収入状況により異なります。

ただし、注意すべきは配偶者の給与明細に「扶養手当」があるかどうか。手当の条件を「社会保険の扶養」としている企業は多いため、自分自身の給与だけでなく、配偶者の給与にも影響が出る可能性があります。もし配偶者の扶養手当を受け取り続けたい場合は、給与が88,000円未満にするなど調整が必要となります。

国民年金加入者の場合は保険料の自己負担が減る

次に扶養ではなく、国民年金に加入しているBさんのケースを見ていきましょう。

Bさん(28歳、契約社員)
◎市内の病院(従業員80名)で医療事務として勤務
◎月給は平均165,000円(年収約200万円)
◎毎月16,610円の国民年金保険料を支払っている(給与からの天引きはなし)
Bさんの場合、これまで国民年金保険料の合計16,610円を毎月の口座引き落としで払ってきました。しかし適用範囲が拡大により、国民年金・国民健康保険が厚生年金・健康保険に切り替わり、給料から天引きとなります。またその保険料の半分を、企業が負担する決まり(労使折半)になっています。
Bさんのケースでは月額15,555円が給料から天引きされます。その結果、月給は手取り約150,000円となり、一見するとお給料が減っているように見えますが、実際には毎月16,610円の国民年金保険料の支払いが不要となり、負担は減ります。更に、企業の負担分と合わせて31,200円相当の保険料を支払うことになるので保障が手厚くなり、将来支給される年金額も月額13,000円増額(※)となります。
※今後15年加入する場合。収入状況により異なります。

社会保険は、税金ではなく『保険』。金額だけで判断しないことが大切です。

年金や保険は、税金と同様に支払いが義務付けられているため、多くの人が損得で考えがちです。多くの人が本来の役割である「保険」として考えることができていません。悩んでいる方には改めて「保険」として考えてみることをおすすめします。
例えば昨年、新型コロナウイルスを発症し、しばらくの間パートに出勤ができなかったという主婦の方がいました。しかし彼女は社会保険に加入していたので、月給のおよそ3分の2にあたる傷病手当金を受け取ることができました。これは国民健康保険ではカバーしていない制度ですので、社会保険に加入していない場合は単純に収入がゼロとなります。また出産に伴い仕事を休んだ場合にも出産手当金が出ますので、若い世代にも恩恵がある制度です。
更に、日本の年金制度は「二階建て」と呼ばれており、厚生年金には国民年金の額も含まれているため、老後もらえる年金は増えます。障害状態になった場合に「障害厚生年金」の給付を受けることができる点などは、厚生年金の大きな特徴です。

まとめ:社会保険に加入するとどうなるか

◎給料の手取りは減るが、保険料の自己負担は減る場合もある
◎傷病手当金や出産手当金など公的保障が手厚くなる
◎将来受け取る年金の受給額が増える
◎ただし扶養だった方の場合は給与手取り額が減り、配偶者の扶養手当が受け取れなくなるなどリスクもある
◎どうしても加入したくない人は月収88,000円未満で働く、週20時間未満の勤務とするなど調整する必要がある

長い目で見て夫の扶養のままでいいと考えるなら調整を。多少のお金が減っても老後や万が一の際の安心を得たいのであれば加入をおすすめします。大切なのは今だけのことを考えず、将来を見据えた計画を立てること。今一度、どのような働き方をしてどんな老後にしたいのか考えてみましょう。

おはなし

遠藤起予子社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士
遠藤 起予子(えんどう きよこ)
札幌生まれ。生命保険会社の営業を経て、2002年に社会保険労務士を取得、開業。社内制度の整備などの企業支援、道内でセミナー講師として活動。一児の母であり、女性の再就職・人材育成などのセミナーで活躍しています。
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