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○○ママの好きなこと・大切なこと 絵本で子どもたちに「こころの居場所」を|やまだなおとさん

2025年7月15日 公開

絵本作家、イラストレーター、グラフィックデザイナー
やまだなおと さん

絵本作家を軸に、イラストレーター、グラフィックデザイナーなどマルチにご活躍中のやまだなおとさん。学生時代から絵本づくりをはじめ、2018年には文芸社「えほん大賞」を受賞。プライベートでは2024年10月に待望の長女が誕生し、現在ご自宅で創作活動をしながら奥さまと一緒に子育てに励んでいます。「信じられないぐらい子どもが可愛いんです」と笑うやまださんに、育児を経ての変化や夫婦で子育てするコツを伺いました。
※取材協力:「喫茶こん」様( @cafe000con

Contents

1.大学卒業後、夢を追いかけ専門学生に
2.はじめて「好き」を言える世界に飛び込んで
3.夜泣きの時間も創作活動に!
4.赤ちゃんと一緒に、家族みんなが成長している

大学卒業後、夢を追いかけ専門学生に

ーさまざまな肩書きで活動されてますね。まずは現在の活動について教えて下さい
絵本作家として本を発表しているほか、イラストレーター、グラフィックデザイナー、ZINE作家、あとは北海道芸術デザイン専門学校(bisen)のイラストレーション専攻講師としても働いています。どれも定職というよりかはフリーランスで色んな活動をしている形です。
ー小さな頃から絵を描いていたんですか?
いえ、実を言うとそれほどでもないんです。幼い頃は自然豊かな穂別(現・むかわ町穂別)や厚真町に住んでいたこともあり、外で遊んでいることがほとんどでした。その後、大学卒業まではずっと野球部に所属していたので、ほとんど絵を描いてこなかったんです。ただ絵本は家にたくさんあったので身近でしたし、父の影響で映画や音楽などカルチャーにはずっとふれてきていました。
ー絵を描いていなかったのが意外です。なぜ絵本作家の道へ?
高校を出る頃にちょうど実家が札幌に引っ越すことになって、僕も大学受験をして小樽の商科大学へ進学することになりました。将来の夢がまだ漠然としていたので、とりあえず、と経済学科に進んだ感じでしたね。あ、ここからの話が長いです(笑)
ーどうぞ(笑)
3年生になって就活の時期が訪れた時に、全然働くイメージがつかなくて。ふと自分が好きなものは何だろうって思い返すと、映画や音楽などのサブカルチャー、そして一番が絵本だったんですね。それで児童書出版社への就職を目指したんですけど、そもそもが狭き門なので全部落ちてしまって。ふと「自分で絵本作家になったらいいんじゃないか」って考えがよぎったんです。でも、試しに描いてみたら、話は浮かばないし、絵も描けないし…で、「自分にはセンスが無いんだ」って一旦諦めてました。ぜんぶ諦めて、就活しているフリをして映画館に通ってました(笑)。
ー(笑)。そこから再び作家を目指したのは?
4年生になって、ある時母親に就活のことを聞かれて、これはもうウソはつけないと正直に答えたんですね。「絵本の出版社を目指してたけど、ダメかもしれない」って。そしたら母も「自分で作ったらいいんじゃない?」と言い出して。
ースゴイ、お母様も分かってたんですね
僕が「そんなの才能を持った一握りの人だけだよ」と答えたら、押し入れの奥から箱を引っ張り出してきて、僕が幼い頃に読んでいた絵本や、マネして描いてた手づくりの絵本が詰まってたんです。それを見せながら「ほら、本当は作りたいんでしょう?」って。正直に頷くしかないですよね(笑)。後で分かったんですが、実は就活が上手くいっていないことがバレてて、父親と一緒に準備してたらしいんです。

はじめて「好き」を言える世界に飛び込んで

▲2024年11月、札幌市えほん図書館で開かれた「子どもの図書館デビュー」の企画で、読み聞かせを行うやまださん。

ーとってもいいご両親ですね
本当にそう感じてます。それで、きちんと絵の勉強をするために大学卒業後、そのまま北海道芸術デザイン専門学校に入ることにしました。これまでとは全く違う文化系の雰囲気で、みんな自分より年下ではありましたけど、自分が自分らしく、「好き」を堂々と言える空気感がすぐ気に入りました。野球部で「絵本が好き」なんて言ったら、イジられちゃいますから(笑)
ーたしかに(笑)
鉛筆削りをするのも、絵の具を使うのも、何をやっても楽しかったです。自分より絵が下手な人は誰もいないけど、元が下手だから上達するのも早い(笑)。練習をしながら自主制作で絵本づくりにも挑戦していって、1年生の終わり頃に1冊つくり上げました。その瞬間が一番楽しくて…。で、2冊目、3冊目…と作っていったんですけど、楽しさが目減りしないんですね。それでハッキリと絵本作家を目指すと決めました。でも、当然すぐに生活費を稼げるわけじゃないので、卒業後はデザイン事務所でバイトをしながら創作活動を続けることにしたんです。
ー軌道に乗り始めたのはいつごろですか?
2017年〜2018年、27歳ごろですかね。社会人になって1年が経ったころ、絵本作家として売れるかも不安、会社員には向いていない、お金はない…とモヤモヤでいっぱいになっちゃて、アルバイト先のデザイン事務所を辞めて東北にひとり旅へ出たんです。大好きな太宰治や宮沢賢治の記念館を巡って、道中は岡本太郎の本を読んで、すっかりエネルギーを取り戻しました。それで旅から戻ったら出品していた「やかんひこう」(2021年に北海道新聞社から出版)という絵本が文芸社の「えほん大賞」で優秀賞を受賞していました。翌2018年には「プップクプードル」が同じコンテストの大賞に選ばれて、商業出版されることになりました。
ー長い道のりでしたね…
あと、学生時代からお世話になっていたグラフィックデザイナー那珂隆之さんのデザインユニット「SHIMAUMA DESIGN」に所属しながら母校の講師としても働かせてもらえることになって。お金持ちではないけど、何とかやっていけるようになりましたね。

夜泣きの時間も創作活動に!

▲絵本にはやまださん自らの「好き」もギュッと詰め込んでいます。今回取材にご協力いただいた「喫茶こん」もコッソリ登場。

ーついつい何の取材か忘れるところでした。子育ての話に…
そうでしたね(笑)。昨年の2024年に、専門学生の頃からお付き合いしていた女性と結婚して、10月には第一子である長女が誕生しました。もともと僕は子どもが好きで、生まれる前からめちゃめちゃ楽しみにしていたので本当に嬉しかったです。
ーお子さんが誕生して、心境の変化は?
信じられないぐらい可愛い。100%可愛がれる自信がありましたけど、ケタ違いに可愛いです。可愛すぎて、時々「エーッ!?」って言いたくなります。
ー愛情がよく伝わります(笑)
大変さも思った以上でしたけどね(笑)。僕は家が仕事場でもあるし、時間の自由が効くぶん、はじめから妻と一緒に子育てしようと決めていたんですけど、泣くたびに仕事が中断しちゃう。そうじゃなくても、可愛すぎて中断しちゃいます。
ー「夜泣きdeシネマ」なるZINEも制作してますよね
そう、ぜんぜん寝ない子で毎日寝不足です。でもそんな時間をどうにか有効活用できないかな…と、ウォッチリストに入れたままだった映画を観て、その感想をZINEにまとめることにしました。あとは、真夜中に妻とお茶をするようになりましたね。子どもが生まれてから夫婦で過ごす時間がぐっと増えたと思います。
ーとってもいいパパで、いい夫ですね
大変なんだけど、その時間を少しでも楽しくしよう、とお互いで考えています。それでも僕の要領が悪くてイライラさせちゃったり助けてもらうこともたくさんありますけどね(笑)。やっぱり出産による体への負担は奥さんのほうが圧倒的ですから、少しでもラクさせてあげたいという想いです。

▲仕事場で長女と。「可愛いすぎて仕事が進まない時があるんです(笑)」(ご提供写真)

赤ちゃんと一緒に、家族みんなが成長している

ー夫婦でうまく育児するコツはあるのでしょうか
あくまで夫目線からですけど、「夫のできることを増やす」ではないでしょうか。男性のほうが家事ができない方が多いので、一気に色んなことを求めてしまうと上手くいかない気がします。女性からすると「夫まで育てなきゃいけないの?」って感じかもしれませんが(笑)
ーやまださんは「できること」増えましたか?
僕も料理する頻度が増えましたねえ。炊事、洗濯もけっこうやるようになりました。何だか子どもと一緒に家族みんなが育っているような感覚が楽しいと感じてます。
ー作品づくりへの影響はいかがでしょう?
もともと子どもや家族をテーマに描いた作品が多かったんですけど、今は当事者意識が芽生えたおかげでより解像度の高い作品づくりができるようになった気がしています。現在は「家族に向けた手紙」をテーマにした新作を構想している段階です。きっと今までで一番イイものができるぞ、という確信があります。
ー最後に、メッセージをお願いします!
我が子を可愛い可愛い…と思いつつも、やっぱり将来を考えると不安になる時はあると思います。僕も「いじめに遭ったらどうしよう」「守ってあげられるだろうか?」と考えて頭がいっぱいになることがあるんです。でも、そんな時に自分の居場所になったのが音楽や映画、文学、それから絵本の世界でした。学校で嫌な思いをしたときも眠れない時も、救ってくれたのは絵本だったんです。僕は作品づくりを通じて、自分の子どもはもちろん、世の中の子どもにも、それからかつての子どもであった大人たちにも「居場所」を与えられたらいいなって考えてます。
ーありがとうございました!

絵本作家、イラストレーター、グラフィックデザイナー
やまだなおと さん